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海外就活事情

日本を出てから5年半が経ちました。アメリカ2年、パラオ2年、スリランカ1年半。最近、家族に「いつ帰ってくるの?」と聞かれなくなり、この海外生活が標準として受け入れられたんだなあと思います。

でも親戚や知り合いには相変わらず、「いつ就職するの?」「今度はスリランカ?あちこち飛ばすなんてひどい会社だね」などと言われ、一つの働き方として理解してもらうのはなかなか難しいなあと思います。

 

私は、いろいろな(主に日本政府系の)機関で、2〜3年の契約で国際開発関係の仕事をしています。2、3年ごとに就活をしなければならないので、不安定だと思われたり心配されたりするのですが、一度飛び込んでしまえば大したことではありません。私は日本の大学からアメリカの大学院に直接進学したので、最初の就活は日本の新卒就活と同じで辛かったですが、二度目からは選り好みしすぎなければ仕事はいくらでもあります。契約と契約の間が開いてしまったり、待遇が前職より落ちるようなことはありますが、どこでどのような待遇でどんな仕事をするのかを自分で選べるのがいいところです。逆に、同期の絆や組織への所属意識はとても低いので、その点は他の人を見て羨ましいと思うこともあります。

 

大学院時代、外部講師としてあるコースを受け持っていた大手NGOのプログラム・ディレクター(日本の企業で言うと部長ぐらいの役職)の人が、授業である就職サイトを紹介してくれた際、「私は今転職を予定していないけど、どのようなオプションがあり得るのか把握するためにこのサイトは常にチェックしている」と言うのを聞いて、衝撃を受けたのを覚えています。

また、パラオで働いていたとき、ジュネーブから視察に来ていたある国際機関のディレクターからLinkedIn(キャリア用ソーシャルネットワーク)のネットワーク申請が来たので、ここまでキャリアを上り詰めているように見える人でもまだアンテナを張っているんだなあと驚いていたら、その数ヶ月後に彼は転職していました。

私は年を取ってからも上昇志向を持ち続け、積極的に行動していてかっこいいと思いましたが、自分のキャリアばかり気にしていて今の仕事に集中できないじゃないか、と思う人もいると思います。また、同僚たちがいずれ同業の別組織に転職していく前提だと、信頼しあって仕事をすることが難しいというのも確かです。日本には日本の素晴らしい組織力がありますが、好きでも嫌いでもこの欧米式が世界標準なので、海外で働くなら受け入れてやっていくしかありません。でも今の私にはこの働き方が合っていると思います。

 

では実際にいつもどのように就活しているのか紹介します。

1.CV・Resume

Curriculum Vitae (CV)やResumeとは、履歴書のことです。日本とは違って自由様式で、メールアドレスなどの連絡先の下に、職歴や資格、学歴を列記し、写真はつけないのが普通です*1。"CV sample"などと検索すると、たくさん例が出てきます。

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(CVの一例。free CV examples, templates, creative, downloadable, fully editable, resume, CVs, resume, jobs

このようなCVに短いアピール文を書いたカバーレターをつけて、企業に送りつけます。新卒で職歴のところに全く書くことがないとかなり厳しく、また応募しているポストの仕事に関連した経験でないと、たくさん書いても意味がありません。だから欧米の学生は、インターン等で経験を積むのに必死です。大学院のキャリアカウンセラーに、"Build up you resume!"と毎日のように言われていましたが、履歴書で「私はこれまでこういう仕事をしてきたから、あなたの組織でもこういう貢献ができます」というストーリーを描けないといけません。

こうやって書くと、今の仕事は次の就職のために履歴書に書くネタ作りのように聞こえてしまうかもしれませんが、実際そういう面も否定できません。私は、その中でも、限られた契約期間の中で、完全な内部の人間でないからこそできる、外からの視点を生かした仕事をしたいと思っています。

また、CV例の最後にあるReferenceというのは、前職の上司など、以前仕事をしたことのある人からの紹介です。採用担当者は、この紹介者に連絡を取って評価を聞くこともあります。転職がキャリアアップの手段として広く認められているからこそ成り立つものですが、ときどき求人情報に「応募書類に紹介者3名からの紹介文を添付すること」 などと書かれていることがあり、取り付けに苦労したりもします。

2.求人情報

公募の求人情報は、日本で言うマイナビのような就職サイトで探します。indeedやMonsterといった一般的なサイトや、イギリスやオーストラリア等国ごとのサイトもありますが、業種ごとのサイトで探すのが効率的です。開発系では、世界最大手はDevex、 日本ではPARTNERというサイトがあります。

Job Search | one search. all jobs. Indeed.com

International Jobs, Global Jobs, Jobs Abroad | Monster.com

Devex International Development

PARTNER 国際協力キャリア総合情報サイト

業種別のサイトは、自分がやってみたい仕事のキーワードを入力してみて、どのような仕事があり得るのか見てみるのがお勧めです。求人情報内のQualificationsという箇所を見れば、その仕事に就くにはどのような経験や学歴が必要か書いてあるので、今は応募できなくても、いつかそのポストに就けるよう目指すには何をしていけばいいのかわかります。

また、眺めているうちに、自分の関心がある分野では、どの企業や組織が求人を出しているのかがわかってきます。その企業・組織のウェブサイトに行くと、見出しタブや組織概要(About Us)の中にCareer, Jobs, Work With Us等の項目があるので、その組織の求人情報を漏れなくチェックすることができます。

多くの求人情報をチェックするのは面倒ですが、2年前には応募できなかった仕事に手が届くようになったとか、こんな魅力的な仕事があるのかとか、うれしい発見もたくさんあって、これまでのところ楽しんでやっています。 

3.LinkedIn

LinkedInは、facebookのように実名を使ったソーシャルネットワークですが、キャリア用に特化されたものです。世界で4億人が登録していて、CVの内容をアップロードしたり、業種や企業ごとにグループでネットワークを形成することができます。


What is LinkedIn?

この動画を見ればわかるように、基本設定だと名前を検索するだけで、LinkedInに登録している情報がわかってしまうので、注意が必要です。一方、企業の採用担当者の中には必ず応募者の名前を検索するという人も多く、プロフェッショナルなプロフィールを検索できるようにしておくのも利点はあります。

www.linkedin.com

4.ネットワーキング

これまでオンラインでの就活についていろいろ書いてきましたが、こうした求人には多くの応募が殺到するので、どんなにいいCVを作って送っても採用担当者の目に止まる確率は低いかもしれません。業種にもよると思いますが、結局はネットワーキング(コネ作り)が一番大切です。

自分の関心のある組織のイベントや、その分野の国際会議や研修等にはなるべく参加するようにし、周りの人たちに話しかけ、名刺を交換しておきます。こういう機会を通して同業者と繋がっておくと、思いがけず有意義な情報を教えてもらえたり、運がいいと仕事を紹介してもらえることもあります。もちろん、そういった展開につながらないことの方が多いので、同業の人たちと広く交友を深めたいという気持ちがまずあって、その副産物として情報を得られたらいいなというぐらいでないと続きません。 

5.ビザ・勤務形態

海外で働くのに、一番難しいのはビザの問題です。例えば、アメリカでは就労ビザを取得するのに雇用者に100万円ほどのスポンサー料を負担してもらわなければいけなかったりします。途上国でも、就労ビザの取得は意外と難しいものです。

一番簡単なのは、現地の組織ではなく、国際組織や日本の組織に採用された後で、駐在員として派遣してもらうことです。ビザは取ってもらえるし、普通は在外手当や家賃補助がついて、現地で採用される場合よりも待遇がよくなります。派遣元組織のある国(日本の企業なら日本)の基準で給与や手当が出るので、勤務先が途上国だったりして物価が安い場合には、割と余裕のある生活ができます。現地の言葉ができなくても、組織の公用語(英語や日本語など)ができれば採用されることもよくあります(ただし、スペイン語、中国語など主要な言語が使われている国では、その言葉ができないと難しい場合も多い)。

現地採用のいいところは、仕事を見つけやすいことだと思います。現地の事情をよく知っていて、言葉もできるということであれば、国内外のいろいろな企業から声がかかりますし、まずその国の求人情報は現地にいた方が断然入ってきやすいです。もし働きたい国が決まっていて、ビザや家賃の問題がない場合には、一つの選択肢だと思います。

 

これを読んで、なんだこれぐらいならできそうと思った人も、やっぱり不安定だからやりたくないと思った人もいると思いますが、知らなかった人にもこういう仕事の仕方もあるのか、と知ってもらえたらありがたいなと思います。

 

*1:写真をつけると、肌の色など外見での差別が意識的・無意識的にされやすいという事情があります。ただし、名前だけでも人種がわかることが多いのでこの問題は残っています。アメリカで、José(ラテン系とわかる名前)という人が、履歴書の名前をJoeに変えたら、返信が格段に増えたという話が広く報道されたこともありました。

www.huffingtonpost.com